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やっぱり千葉が好き! 第18回 地産地消の手作り革カバン 〜NUIZAEMON柏

柏駅からすぐのところに、ちょっと面白い手作り皮カバンの店がある。

「NUIZAEMON柏」がそれだ。

ローマ字部分を日本語表記をすると「ぬいざえもん」。

名前も風変わりで面白いけれど、しかし本当に面白いのはオーナーの飯島暁史さん(42)のキャラクターだと思う。

 

そもそも飯島さんは浅草の皮カバンのメーカーで営業・生産管理の傍ら修理担当をしていたのだが、「簡単な修理を職人さんに頼むより、自分でやった方が早くて喜ばれるんじゃないの?」と思ったのがきっかけで、ミシンを踏むようになったのだそうだ。そこからさらに既製品のカバンを次から次へとバラしては、その構造やパターンを学んでいくうちに、気づけば「皮カバンをデザインして作れる人」になってしまったのである。

 

「だから、ぼくは、未だに『独学』で皮カバンを作っているんです」

そう言って飯島さんは笑うけれど、自分のブランドを立ち上げ、店を営業するまでになれたのだから、飯島さんの「独学」のレベルはおのずと想像できるだろう。

 

「NUIZAEMON柏」には、まだまだ面白さが詰まっている。

例えば、地元のブランド豚「柏幻霜ポーク」の皮を使った「地産地消」商品があることだ。

その名も「柏レザー」シリーズ。

 

「柏レザー」は、豚皮ゆえに牛よりも軽く、摩擦にも強いのが特長だという。

さらに、地元の麗澤大学と「柏レザー」を使ったコラボ商品を製造販売してみたり、地元の新京成電鉄で使われなくなった「つり革」を再利用し、「つり革かばん」「つり革パスケース」といったオリジナル商品を生み出してみたりと、とにかく面白いアイデアが続々とカタチになっているのである。

 

最近では「キョン皮」を使った商品も人気だそうだ。

キョンと聞いても、あまりピンとこないかも知れないが、要するに小型のシカのことである。

かつて観光施設から逃げ出したキョンは千葉県内で野生化し、その数を爆発的に増やしてしまった。そして、いまや、農作物に大打撃を与える害獣として県民を困らせているのだ。

そこで飯島さんは、駆除されたキョンの皮を有効利用することを思いついたのである。

 

「名付けて『房総レザー』です。キョンの皮って、じつは、最高級のセーム革でもあるんですよ。ふわっとした手触りも独特でしょ?」

ぼくは、その「房総レザー」で作られた財布を触らせてもらったのだが、なるほど、しっとりと優しい手触りで、撫でていて心地いい。

キョンは身体がとても小さいシカなので、一頭から取れる皮の面積も非常に小さいうえに、そもそも猟師が獲ってくれた分しか入手できないため、「房総レザー」はかなりの貴重品なのだそうだ。

開発されたばかりで、まだ、さほど知られていない「房総レザー」だが、いずれ皮革製品のマニアたちにこの存在が知れ渡ったら、「レア物」として人気に火が付きそうな気がする。

 

ちなみに、商品をデザインする際に飯島さんが心がけていることを訊くと、とても分かりやすい答えが返ってきた。

「軽いこと、構造がシンプルなこと、あとはカラフルな色使いですかね」

 

つまり、使い勝手がよくて個性的、ということだろう。店内にずらりと展示された商品群を見てみれば、それはよく分かる。

 

「NUIZAEMON柏」では、ときどきワークショップに出向いたり、店舗奥の工房で体験教室(5000円/税抜き)をやったりもしているというので、ぼくも体験教室を申し出た。

基本、初回の体験では、スマホケースにぴったりな小物入れを作るのが通例なのだそうだが、ぼくは「小説家なので!」と、ちょっと無理を言って、文庫本用のブックカバーを作らせてもらうことに。

もちろん、使う皮は「NUIZAEMON柏」イチ押しの「柏レザー」である。

 

体験は、おおよそ次のような流れになる。

1・自分の好きな皮の色を選ぶ。

2・型紙に合わせて皮をカッターで切り抜く。

3・縫製する部分の皮を重ねたり折り返したりして、両面テープで留める。

4・飯島さんに手取り足取り指導してもらいながら、工業用のミシンで縫う。

5・皮に穴を開け、金具を取り付ける。

 

ぼくがミシンを踏んだのは、おそらく小学生の頃の家庭科の授業以来である……。

「ミシンって、縫うことよりも止めることが難しいんですよ」

飯島さんの言うとおり、ギリギリのところでピタリと止めるのが実に難しかった。

「はい、あと3目だけ縫い進めて下さい」

と飯島さんに言われているのに、うっかり4目まで縫ってしまいがちなのだ。しかも、「2目戻って」と言われると、なぜか3目戻ってしまう。

 

とはいえ、練習用の皮で何度か試し縫いをさせてもらっているうちに、コツがつかめるようになってくるから大丈夫。

 

というわけで、「柏レザー」を使った、世界でひとつだけの手作りブックカバーの完成である。

「やぱ千葉」取材チームの面々(編集、カメラ&助手)も、それぞれ小物入れやらペンケースやらを作らせてもらって、その仕上がりにニンマリ。

 

千葉と柏から、世界へ。

「NUIZAEMON柏」の誇る「地産地消」商品たちが、いつか海を超えて広く愛されるようになったらいいな……、と夢想しながら、ぼくは自分で作ったブックカバーを撫で撫でするのであった。

 

 

 

【NUIZAEMON KASHIWA】

〒277-0005

千葉県柏市柏2-7-9

TEL:04-7162-1239

HP: http://nuizaemon.tsnt.net/

 

 

作者:森沢明夫

写真:鈴木正美

写真アシスタント:重枝龍明

編集:西小路梨可(主婦の友社)