暮れも押し迫り、平成最後のお正月を迎えようとしています。大掃除やおせちづくりなど、新年の準備に追われている方も多いのではないでしょうか。
お正月の食卓に欠かせないのが、なんといってもお雑煮! 全国各地で、出汁や具など少しずつ異なる特色を見せるお雑煮ですが、千葉県ならではの「はばのり」を使った雑煮はご存じですか?

はばのりとは、主に勝浦から鴨川にかけての外房で採れる海藻です。少し海藻の質は異なりますが、白浜で採れる「白浜はば」と呼ばれるものもあります。今では生産量が激減し、大変貴重な食材とされています。県内では古くから、おもに千葉市、市原市、東金市、山武市などで多く食され「これを食べないとお正月が来た気がしない!」という地元の方も。「はばたく」「はばをきかす」などの語呂合わせで、縁起ものとされています。

市原市にある、昭和2年創業の歴史を誇る小池海苔店の小池雄二郎さんに話を聞くと、はばのりは秋が深まる頃に磯に芽を出し、冬から春にかけて摘み取りが行われるとのこと。すべて天然もので養殖は行われておらず、生息地の近所に住む一般の方が、成長したはばのりをひとつひとつ手作業で採集しています。岩にへばりついたのりを丁寧に摘み取っていくので、1枚分のはばのりを採集するだけでも気の遠くなるような時間がかかります。


採集したはばのりは石などの異物をとり除いて海水で丁寧に洗い、「のりすのこ」の上に広げて天日で干します。

このようにとても手間のかかる貴重なはばのりですが、入札は毎年12月のクリスマス付近と、年が明けた1月末の年に2度しかなく、市場に出回るのは年末年始だけです。この時期に販売されるはばのりは、1月の入札で仕入れ、年末まで冷凍保存されていた「春はば」と呼ばれるものと、同年の秋から冬にかけて収穫された「新はば」です。どちらも風味に大きな差はありませんが、やはり収穫から間もない「新はば」のほうが高値で取り引きされるケースが多いとのことです。

県内の海苔店では、春はばのはばのりを3枚入りだと約3,000円前後で販売しています。1枚の大きさはB5サイズほど。普通ののりに比べてとても高価ですが、お正月ということで、ここは奮発してみてはいかがでしょうか?

はばのり雑煮は、かつおぶしで出汁をとるのが一般的。しょうゆで味を調えますが、はばのりに塩けがあるのでおつゆは塩分控えめに。具は角餅のほか、鶏肉やかまぼこ、たんざくに切った大根などをお好みで。はばのりは、弱火であぶります。黒かったのりが、緑がかってきたら火を止めましょう。色はあっという間に変わるのであぶりすぎに注意! ひとり分のお椀に、およそ3分の1枚のはばのりを使用します。お雑煮の上に、あぶったはばのりを指でもみこんで散らせばできあがりです。はばのりにかつおぶしや青のりを混ぜてから散らす食べ方もありますが、はばのりの風味を十分に味わいたい方はぜひ一度、はばのりだけで試してみてください。豊かな磯の香りと、通常ののりとはまったく違うコリコリとした歯触りが絶妙です! 地元に伝わるおめでたい「ふるさとの味」を、ご家族で楽しんでくださいね。
<取材協力>
(株)小池海苔店 http://www.koikenori.co.jp/
取材・文/植木淳子

