ほっと、人、あんしん。京葉ガス

ともに With you 千葉

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presented by SHUFUNOTOMO

やっぱり千葉が好き! 第27回 世界でひとつのアクセサリー作り体験 〜彫金工房「冨銀」

Be still and the earth will speak to you.

【訳=静かにしてごらん。そうすれば大地があなたに話しかけてくるよ】

 

北米インディアンのナバホ族に伝わるというこの言葉が、ぼくは好きだ。

たぶんぼくは十代の終わりから二十代の前半にかけて、野宿で放浪しながら自然のなかに身を置いていた経験があるから、感覚的にしっくりくるのだと思う。

 

というわけで、今回は、そんなナバホ族の「インディアンジュエリー」の作り方を模した「シルバーネックレス作り体験」をすべく、館山市の海辺にある彫金工房「冨銀」を訪れた。

 

指導してくれるのは、この工房のオーナーにして彫金師の出口洋さん(五三歳)だ。

 

千葉大学の工学部工業意匠学科(現デザイン工学科)出身の出口さんは、理系のアタマを持つサーファーで、毎週、千倉の海へと繰り出しては太平洋の波と戯れているという。

かつては自動車メーカーでカーデザイナーをしていたという経歴も面白いけれど、当時、その仕事をいきなり休職して、青年海外協力隊に飛び込んだと思ったら、一路コスタリカへ飛び、そのコスタリカでは大学で教鞭をとって講師としてデザインを教えていたというから、なお面白い。

ちなみに、現在の奥様は、そこで出合ったコスタリカの人だそうだ。

 

なんだか、かっちりとした理系の固い頭と、自由気侭に生きてしまう柔らかい頭の両方を持ち合わせた、珍しいタイプのアーティストだなぁ、と思っていたら、出口さんはおもむろにこんなことを言うのである。

「ぼくは『固いのに曲がる』という金属の感じが、感覚的に好きなんですよね」

やっぱり、固いけど柔らかいのがお好きなのである。

 

そんな出口さんだけれど、決して変人ではない。性格はとても親しみ安く、雑談も楽しいし、いざ「シルバーネックレス作り体験」に入れば、やさしく丁寧に教えてくれるのだ。

 

さて、ネックレスの制作工程だが、ざっくり以下のようになる。

まずは、紙に鉛筆でデザインを描くところからスタートだ。

今回の体験ではシルバーに模様を「彫る」のではなく、いろんな種類のタガネを打って模様を刻みつけていく、というスタイルなので、それを考慮してデザインすることが大事である。

タガネの模様は多種多様で、たとえばイルカ、カモメ、星、月、丸、三角、山、ハート、太陽、貝殻などがあるほか、文字を刻むためのアルファベットも用意されている。

 

デザインが決まったら、丸い純銀の玉(六グラム)を、大きな金槌で叩いて潰し、シルバーの板を作る。

「両手を絞るように金槌の柄を握って、片足を前に出して、半身に構えてね」

出口さんの指示を仰ぎつつ、純銀の玉カンカンと叩いていく。素人の手作業だから真円にはならないけれど、それもまた手作りの味である。ぼくは直径二センチくらいの、ほぼ円い板に伸ばした。

 

銀の板が出来たら、ドリルで紐を通す穴をあけてもらう。

これで、刻印前のペンダント・トップが出来上がりだ。

 

ここからは、いよいよ模様を刻みつける作業に入る。あらかじめ描いておいたデザインを見ながらタガネを選び出し、金槌で釘を打つように刻印していく。

一ミリでも刻印する位置がズレてしまうと、デザインのバランスが悪くなってしまうのだけれど、まあ、これもご愛嬌ということで。

 

模様を刻み終えたら、硫黄の入った液体に浸してエイジング。いわゆる「いぶし」という作業だ。全体が黒ずんだところで、今度は研磨剤をつけた布でよくこすってやる。そうすると、凹んだところだけに黒ずみが残り、それ以外は銀色に輝く。つまり、模様がくっきりと浮き出るのである。

 

お次は「へら」と呼ばれる金属の細い棒で、ペンダントの外周をゴシゴシとこする。こうすることでバリが取れ、手触りがよくなり、ピカピカと周囲が光りだす。

 

最後に、紐の色を選んで、それを出口さんに通して結んでもらう。

これで、世界でひとつだけの「ナバホ族っぽい」ペンダントの完成である。

ここまでの所用時間は二〜三時間ほどだが、作業が楽しいせいか、感覚的には「あっという間」だった。

出来上がったペンダントを自分の首にかける瞬間は、くすぐったいような、ちょっといい気分である。せっかくなので、ぼくはこれを普段使いにしようと思っている。

 

今回はペンダントを作らせてもらったけれど、「冨銀」では、バングルや指輪作り体験も出来るので、次回はバングル作りにチャレンジしてみようかな−−−と、ぼくはすでに妄想もくもくである。

 

「カップルで体験にきて、それぞれのイニシャルをリングに刻んでいく若い子たちもけっこういますよ。あと、家族旅行の記念にペンダントを作りに来て、その家の子供が家族みんなのイニシャルを刻んでいる様子を見たお母さんがウルっとしてたり。ほんと、うちに来てくれるお客さんは、いい人ばかりなんですよ」

にこにこしなが、そんなことを教えてくれる出口さん、あなたもいい人ですよ!とぼくは言いたいのである。

 

出口さんご本人が製作した珠玉の作品は、工房でも買えるほか、インターネット通販でも販売されているとのこと。また、「この石を使って欲しい」といったオーダーメイドも受け付けているそうなので、大切な石をアクセサリーにしたい方は「冨銀」を訪れてみては?

 

 

 

【彫金工房 冨銀】

 

〒294-0055

千葉県館山市那古925−26

TEL:090-7838-4555

HP:http://www.tomigin.com

 

 

※2020年1月時点の内容です。

 

 

作者:森沢明夫

写真:鈴木正美

写真クリエイティブマネージメント:重枝龍明

編集:西小路梨可(主婦の友社)