ほっと、人、あんしん。京葉ガス

ともに With you 千葉

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presented by SHUFUNOTOMO

やっぱり千葉が好き! 第26回 一期一会の見晴らし 〜野見金山展望カフェ ミハラシテラス

千葉県のちょうど真ん中、まさに「おへそ」と呼ぶにふさわしい場所に野見金山(のみがねやま)がある。

「山」といっても、標高はわずか一五二メートル。感覚的には「丘」といった方がしっくりくるような大地の凸だ。しかし、その山のてっぺんに立ったとき、ぼくの口からは、思わず感嘆の声が漏れていた。

 

「おお、これはいいなぁ……」

眼下に広がった風景が予想以上にのびやかで、ひたすらシンプルに感動してしまったのだ。

 

ゆるやかな斜面を駆け上ってくる、凛とした冬の風。

四方八方から聞こえてくる野鳥たちの歌声。

ぼくは傍に設置されている双眼鏡にコインを入れて、山頂からの風景を楽しんだ。天気が良ければ太平洋やスカイツリーが見えるらしいのだが、この日は残念ながら曇り空で、さすがにそこまでは見られなかった。

 

ここ野見金山の頂には「野見金山展望カフェ ミハラシテラス」という小さな喫茶店がある。「店長兼オーナー兼マスター」の片岡智さんは、にこやかで、とても感じのいい四七歳だ。

 

「この山は、もともとは牧場で、近隣の学校の遠足に使われたりしていたそうです。で、そこを町の人たちが開拓して、桜を五〇〇本、梅を三〇〇本、紫陽花の株を一五〇〇株も植えてくれました。おかげで、いまは花の名所にもなっているんですよ」

コーヒーを丁寧にドリップしながら、片岡さんが教えてくれた。

 

もっと言うと、近年は町の「シルバー人材」がせっせと草木を植えてくれるので、いっそう華やかな場所になったという。

そういえば、さっき車をとめた駐車場にも、たくさんの山茶花(さざんか)が咲いていたから、それらもきっと町民がせっせと植えてくれたものなのだろう。

 

「ちょうどあの辺りから朝日が登るので、初日の出を見にくる人も多いんですよ」

カウンターに立ち、大きな窓ガラスの遥か向こうに広がる地平線を指差した片岡さんの緩んだ頬には、「コノミハラシガオキニイリデス」と書いてある。

 

さて、ぼくら「やぱ千葉チーム」は、この店のおすすめメニュー「ちょな丸カレー」のサラダセットを注文した。カレーにサラダとコーヒーが付いて、お値段は一二〇〇円也。

ちなみに「ちょな丸」というのは、長南町のマスコットキャラのことで、顔がレンコン、首から下も町の特産物で描かれたゆるキャラだ。

 

しばらくして片岡さんがカレーを配膳してくれた。

カレー好きなぼくは、さっそくスプーンでパクリ。

 

咀嚼しながら、思わず「うん!」と頷く。

ぼくの好物であるキーマカレーを彷彿させる風味だったのだ。スパイスの調合と酸味と旨味のさじ加減が完璧である。

 

さらに、このカレーのプレートには数種類の野菜がどっさり添えられていて、これがまた、しみじみ美味い−−−、といっても、この野菜たちは、ただ蒸したり茹でたりしただけで、味付けは一切されていないという。

つまり、野菜そのものの美味しさを堪能しながら、カレーの風味も楽しむ−−−そういうコンセプトのプレートなのである。

 

片岡さんが野菜に味付けをしないのには理由がある。そして、そのワケは、片岡さんが最初にオープンした「もうひとつのお店」にあるという。

「じつは私、以前は東京のクラブでDJをやってたんですね。で、地元に帰ってもDJが楽しめるような店があったらいいな、と思って、とりあえずカフェをつくって、そこに友人たちを呼んでみたら、思いがけず『千葉らしさがいいね』って喜ばれたんですよ。だったら、DJよりもむしろ『千葉らしさ』を全面に押し出した店にしてみようかな、と思って、地元の野菜に特化した『シンパカフェ』をオープンさせたんです」

片岡さんは、周辺の若手農業者たちと仲良くなり、彼らが「自家用」として特別に無農薬で作っている希少な野菜を仕入れさせてもらえるようになった。そして、この「ミハラシテラス」でも、「シンパカフェ」と同じ「特別な野菜」を使っているのである。

カレーのプレートに添えられた野菜たちが、味付ナシでもいちいち美味しいのは、つまり、そういうワケなのだ。

 

追加注文したスイーツまでペロリと平らげたぼくは、素朴な質問を片岡さんに投げてみた。

「ここからの見晴らしがいちばんいいのって、いつ頃ですか?」

すると片岡さんは、一度「うーん」と首をひねってから答えてくれた。

「正直、それぞれの季節に良さがあるんですよね。たとえば今は冬枯れですけど、緑がない代わりに空気が澄んでいることが多くて、じつはすごくきれいなんですよ。あと、天気の悪い日は当然お客さんが少ないんですけど、雨上がりに不思議な『空気の揺らぎ』が見られることがあるんです。だから、晴れていなくても、それはそれで感動的な景色なんですよね」

なるほど。ようするに、その日、その瞬間、に出合えた風景を、自分がどう感じるか−−−、その心ひとつで、目の前に展開する風景の価値は自在に変えられる、というわけだ。

 

余談だが、ここでは毎年、様々なイベントが開催されているという。

たとえば、星空観賞会、ブルーベリー狩り、袖凧揚げ、太巻寿司・味噌づくり教室、桜のライトアップ、イルミネーション等々……。

事前にホームページをチェックして、それらイベントに合わせて訪れてみるのもアリかも知れない。

仮に、そのイベントが雨で中止になったとしても、かまわずミハラシテラスを訪れて、一期一会の見晴らしと、美味しいカレーとコーヒーを幸せな気持ちで堪能できたなら−−−。

 

はい、あなたに「ミハラシ免許」を皆伝しましょう。

 

 

 

【ミハラシテラス】

 

〒297-0154

千葉県長生郡長南町岩撫36

TEL:0475-46-1300

HP:https://miharashiterrasse.info

 

 

※2019年12月時点の内容です。

 

 

作者:森沢明夫

写真:鈴木正美

写真クリエイティブマネージメント:重枝龍明

編集:西小路梨可(主婦の友社)