寒い冬の定番メニュー「クリームシチュー」に欠かせないマッシュルーム！菌床栽培のため季節を問わず通年販売されているマッシュルームですが、需要がもっとも高まるのが12月。売り上げも一年でもっとも高くなります。そのマッシュルームの国内生産量は、毎年千葉県と岡山県がトップ争いをしているとご存じでしたか？ その秘密は、千葉県香取市にある、芳源（よしもと）マッシュルーム株式会社にありました。
千葉の地で50年！ 日本農業大賞受賞で大注目
2018年に日本農業賞大賞を受賞したことで、注目されることとなった芳源マッシュルーム。メディアでもたびたび取り上げられ、そのおいしさや高い品質が話題となっています。じつは芳源マッシュルームが千葉でマッシュルームの栽培を始めたのは、約50年も前のこと。食の欧米化に伴ってマッシュルームの需要が高まり、稲作の裏作として、栽培が盛んに行われ始めた時期と重なります。その後50年の間に、技術革新によって缶詰用マッシュルームから生食用への生産転換に成功し、海外進出も果たすなど、芳源マッシュルームは今や業界のリーディングカンパニーに。現在では国内マッシュルーム生産量の約３割のシェアを占めています。マッシュルームは千葉の名産品！ そう言っても過言ではないでしょう。
もっと知りたい！ マッシュルーム
最近ではアジア料理の人気の高まりなどから、マッシュルームの需要はさらに増え、スーパーマーケットでも一年中手に入るようになりました。しめじやしいたけ、えのきたけなどほかのきのこと同様、意外とどんな料理にも合うマッシュルーム。そこで、マッシュルームを知り尽くした芳源マッシュルーム生産部の菅佐原さんに、おすすめの食べ方やおいしさの秘密などをあれこれうかがいました。
<芳源マッシュルームはなぜおいしいの？>
「おいしいマッシュルームを作るために、培地作りにとことんこだわっています。培地は、マッシュルームの種菌を育てるための、まさに母胎ともいえるもの。培地だけでも完成までに約1カ月かかります。芳源マッシュルームでは、有機たい肥や地下水を使用し、発酵を重ねながら栄養たっぷりの培地を作っています。2010年からは、日本で初めてのオランダ式マッシュルーム用培地製造システムも導入しました。こだわりの培地で作られたマッシュルームは栽培中無農薬。うまみがあって、肉厚なのが特徴です」
整然と並ぶ菌舎。内部はマッシュルームが育つのに最適な、温度17～18℃、湿度90％前後の環境に保たれています。
<ブラウンとホワイトはどう違うの？>
「ブラウン種は味や香りが濃厚で、ビーフシチューやピザなどに向いています。ホワイト種はまろやかで上品な味わいで、ホワイトシチューなどに最適。新鮮なものはスライスしてサラダでいただくのもおすすめです。ブラウン種はホワイト種に比べて日持ちがしますが、栽培が難しく、収穫量もホワイトの約70％。じつはブラウン種は希少なんです」
<マッシュルームってどんな栄養があるの？>
「疲労回復や、肌を整える効果があるといわれるビタミンB2、B6などのビタミンB群をはじめ、パントテン酸やナイアシン、亜鉛、食物繊維などが豊富に含まれています。100ｇで11㎉と、低カロリー食品でもあります」
<生で食べてもいいの？>
「身がぎゅっとしまったものに限られますが、新鮮なものは生で食べられます。いっぽうで、日がたって傘の裏側のひだが黒くなってきたものでも、心配ありません。これはうまみ成分の遊離アミノ酸が増えた証拠。加熱調理が原則ですが、おいしく召し上がっていただけます。」
<おすすめの食べ方を教えて！>
「マッシュルームは洋風料理だけでなく、どんなものにもよく合います。意外とマッチするのがお味噌汁。水からマッシュルームを煮込み、うまみを十分に引き出すのがおいしくなるコツです」
<ウワサのジャンボマッシュルームを食べてみたい！>
「通常のマッシュルームの２～３倍ほどのジャンボマッシュルームは、熟練の社員が大きく育ちそうなマッシュルームを選別し、それ以外のものを収穫して栄養を集中させ、大きく成長させることで誕生します。ジャンボマッシュルームよりもさらに大きい、直径13㎝以上のギガマッシュルームも同様に育てますが、ここまで大きくなるものは厳選して育てた100個のうち1個ほど。なんと、通常サイズでは10,000～20,000個のうちの1個！ とても希少なものです。いずれも、しっかりした歯ごたえと濃厚な味わいが楽しめます。注文はお電話で承っており、ジャンボは１パック３玉で400円、ギガは個体差でお値段が変わり、約2,000～3,000円です。ギガは、ご注文いただいてから15日ほど日数がかかります」
千葉が誇る食材、芳源マッシュルームは、化学肥料を使わない、こだわりの培地で大切に育てられていました。ひと昔前までは缶詰の水煮でしか味わえなかったマッシュルームが、今のように新鮮な状態で市場に出回るようになるまでには、試行錯誤を経ての培地作りや、生産技術の向上など、長年にわたるさまざまな努力あってこそだということがわかりました。
和・洋・中どんな料理にも合うマッシュルーム。冬はもちろん、ぜひ一年を通じてそのおいしさを味わってみてくださいね。
取材協力／芳源マッシュルーム株式会社
千葉県香取市米野井938-1
問い合わせ ☎0478-70-7515
取材・文／植木淳子