ほっと、人、あんしん。京葉ガス

ともに With you 千葉

ほっと、人、あんしん。京葉ガス

presented by SHUFUNOTOMO

うなぎ好きに捧ぐ!  戦前から継ぎ足したタレに通もうなる、松戸の名店『うな亭』

ふわとろに焼き上がったうなぎとふっくらご飯に、こだわりのタレ。

 

シラスウナギの価格高騰で、ますます高嶺の花になりつつあるが、

それでもやっぱり食べたくなるのが、うなぎだ。

 

うなぎ通は、自分好みのうなぎを食すためならはるばる遠征することも厭わないといわれるが、

県内はもとより、東京をはじめとする県外からも多くの常連客が車を飛ばしてやってくるのが、

ここ『うな亭』。

 

 

 

千葉県出身で、キックボクシング史上最高の天才と称されていることでも知られる那須川天心氏も子どもの頃からの常連さんだそう。

 

店はJR常磐線北小金駅から車で約15分、新京成線の常盤平駅からは車で約8分と

繁華街からは離れた住宅街の一角にある。

 

 

 

「うちはほかと比べると安いからね」

 

そう言いながらやさしい笑顔を浮かべるのは、大将の天下井鉄男さん。

17歳のときにこの道に入って以来、うなぎ一筋57年という筋金入りのベテランだ。

 

 

 

茨城で生まれ、福島県のいわき市で育ったという大将が

この世界に飛び込んだのは、都会で遊んでみようと東京に出た折に、

帰りの電車賃を使い切ってしまったことがきっかけだったという。

 

「電車賃を稼がなくちゃいけないと思って、

東京で仕事をしている先輩にアルバイトを探してくれとお願いしたら、

北千住にあるうなぎ屋の加工場の仕事を紹介してくれたんだよね。

100人くらい働いている大きな加工場で、そのうち4割くらいが同郷でさ。

知り合いもけっこういたものだから居心地がよくてね。

そこに2年半くらいいたわけです」

 

数とスピード勝負の大衆店でうなぎに串を打つことから始め、

さばき方から焼き方までうなぎ職人としての基本を体にたたき込んだという大将。

腕を磨いて、さらなる上を目指したいと思ったタイミングに先輩から声をかけられ、

選ばれた職人だけに道が続く東京の老舗高級店を巡るようになる。

 

「背びれや腹びれといった細かいところまで丁寧な仕事をしているうなぎは

食べたときに口当たりが違うからね。焼き方ひとつでもうなぎの柔らかさは変わる。

そういう仕事をできる職人は少ないから先々で大事にしてもらえました」

 

 

(ふっくら焼き上がった白焼き(竹)2,800円は、わさび醤油で)

 

 

見習いを育て、うなぎ職人を束ねる立場にもなり、

うなぎ屋業界で10本の指に入る高給取りだったという大将。

「自分の店をもったら、こんなには稼げないよ。悪いこと言わないから、やめたほうがいい」

という周囲の声を押し切って

松戸市内のこの場所に店を出したのは、今から31年前の平成元年のこと。

 

「同じところにあんまり長くいると飽きちゃうもんだからね。

あとは気の迷い。気の迷いで自分の店をやりたくなったんだけど、それが間違いだったね(笑)」。

 

大将が開店当時からモットーにしているのは、

その日に仕入れたうなぎは、その日のうちに売り切ること。

うなぎは時間が経てば鮮度が落ちるのはもちろん、痩せて味がよくなくなるのが理由だという。

 

店を出した当初は客足まばらで、毎日仕入れたうなぎを廃棄処分する日が続いたそう。

「家内には迷惑をかけたよね。それでも仕入れを減らさないと意地を張れたのは、

食べに来てくれたお客さんが『おいしい』と言ってくれたから」

と大将は振り返る。

 

「うちが使っているうなぎは静岡の三川産だけど、

いくら素材がよくても、やっぱり腕がないとよさを活かせないよ。

腕というより、長年の勘っていうのかなあ。

同じ素材を同じタレで焼いても、職人が違うと味も変わる。

業界では『タレが蒲焼きにのる』というんだけど、おいしさが全然違うの。

このタイミングでタレをつけるのが一番おいしいというのは

体で覚えちゃっているから、説明が難しいのだけれども」

 

 

(ボリューム満点のう巻き1,200円は、家族連れにも大人気)

 

 

うなぎ屋で働いていると、見習いのうちほどうなぎを食べさせてもらう機会が多いといい、

同じ素材を同じタレで焼いていても、

この先輩はこういう焼き方をしているからこの味だ、

あの先輩はこういう焼き方をしているからこの味だと見極められるようになるのだそう。

ただし、それは、いつものまかないだと思って、ただ食べているだけでは身につかない。

見習い時代の頃から、いかにそれを見てきたかどうかの差なのだという。

 

「もうひとつは、やっぱりタレ。
うちの元ダレは戦前からのものをもらって継ぎ足しているから70年前じゃきかないね。

初めて店に来たときにおいしくなかったら、2回は来てくれないでしょう?

長年のうまみが詰まったこの元ダレが一番大事です」

 

 

(写真はうな重(竹)。きも吸いとお新香付き3,200円。うな重(松)は4,300円)

 

 

本当にいいタレを譲ってもらうためには、

うなぎ職人として歩んできた実績だけでなく、辞め方も大事。

どんなに頑張ってきた人でも

世話になった店を後ろ足で砂をかけるような形で辞めるようなことがあれば、

当然、元ダレを譲り受けることはできないのだそう。

 

長年のうまみが出ているタレに

新たに継ぎ足すタレが馴染んで深みが増す。

『うな亭』のタレは、真摯にうなぎと向き合い続けている大将の

職人としての歩みが詰まった集大成であり、誇りでもある。

 

 

(物腰の柔らかさも大将の魅力。奥様とはいつも夫婦二人三脚で)

 

 

【うな亭】

〒270-0021

千葉県松戸市小金原7-17-8

JR北小金駅から車で約15分、新京成線の常盤平駅から車で約8分

TEL:047–348-2113

営業時間: 11:30~19:30

定休日:水

駐車場:向かいのマツエツ小金原店に有料駐車場あり

 

 

※2019年10月時点の情報です。

 

 

取材/文 小山まゆみ

写真   森安照