先日、大阪の「百舌鳥(もず)・古市古墳群」の世界文化遺産登録が正式決定しました。国内では古墳ブームの到来が予想されていますが、じつは千葉県は、全国で2番目に古墳が多い地域であることをご存じですか?
「千葉の古墳だって、世界遺産に負けてないぞ!」ということで、今回はその中でも特に文化的価値の高い、「龍角寺古墳群」「史跡岩屋古墳」をご紹介します。どちらも、千葉県立体験博物館「房総のむら」内にあり、夏休みの自由研究にもおすすめ! 低学年から高学年まで、自由研究を上手にまとめるポイントも、学芸員の方に教えていただきました。
「龍角寺古墳群」ってどんなもの?

古墳時代後期(6世紀)から終末期(7世紀)につくられた、県内でも有数の古墳群です。大和王権の時代に勢力を拡大していった、この地域周辺の豪族の墓とみられています。印旛沼の北東岸から成田市大竹の一帯にかけて115基の古墳が確認されており、そのうち、やや大規模な円墳や前方後円墳を含む78基が、房総のむら内に保存されています。貴重な古墳ながら、自由に散策できるところが大きな魅力です!

発掘調査をもとに、埴輪も復元されています。120個体以上の円筒埴輪と、30個体の形象埴輪がずらりと並ぶ姿は圧巻! 盾持ち武人、椀をささげる女子などの人物埴輪、馬、鹿、犬、猪、水鳥などの動物埴輪など種類も豊富。ぜひお子さんと一緒に探してみてください。
「史跡岩屋古墳」ってどんなもの?

日本でもっとも大きな方墳とされており、墳丘の大きさは東西78m、南北76mで、二重にめぐる周溝を含めると東西108m、南北104mにもなります。3段に盛られた階段ピラミッド型の墳丘は、全国でもとても珍しい形。龍角寺古墳群とともに、国指定史跡に登録されています。龍角寺古墳群と比べ、残念なことに副葬品はまったく遺っていません。江戸時代から、古墳内部に自由に出入りができたことが理由とされています。

南側の墳丘の裾に2基の横穴式石室が並んでおり、そのうちのひとつは柵越しではありますが、内部をうかがうことができます。
房総のむら「風土記の丘資料館」で、もっと古墳を詳しく知ろう!

資料館では、龍角寺古墳群はもちろん、成田市公津原古墳群など、県内各地の遺跡から出土した遺物を展示しています。埴輪や銅鏡など教科書でおなじみの貴重な考古資料を、間近で見られるチャンスです! このほかにも館内では、旧石器時代の石器をはじめ、印旛沼で発掘された子どものナウマンゾウの復元骨格など、貴重な資料がたくさん。お子さんが、社会や歴史を好きになる工夫がいっぱいです。
学芸員の白井先生に聞きました!「古墳をテーマにした自由研究のポイントを教えて!」

Photo/PIXTA
~低学年編~
龍角寺古墳のなかの、101号墳ひとつに絞って、観察してみましょう!
まず目に入るのはたくさんの埴輪。古墳のまわりをぐるりと取り囲むように、200以上の埴輪が配置されています。その種類は、円筒埴輪、人物埴輪、動物埴輪などさまざま。種類別に数を数えて表にしたり、埴輪の形や様子を自分なりにスケッチしたりするのもいいですね。大きな画用紙や、ノートにまとめるだけで立派な自由研究になります。
~中学年編~
「房総のむら」の敷地内には、大きさも種類もさまざまな、たくさんの古墳があります。そのなかで、前方後円墳、円墳、方墳と3つの種類別に、それぞれいちばん大きなものを探してみましょう! 中学年だと40分くらいはかかるかもしれませんが、自然の中を、宝探し感覚で楽しく研究ができます。暑いので帽子をかぶり、飲み物を用意するなどして熱中症にはじゅうぶんに気をつけましょう。「風土記の丘資料館」には、広大な敷地を模したジオラマもあります。写真に撮っておいて、あとから自分なりに地図を描き、古墳の位置を記してみるのもいいですね。
中学年以上になると、資料をまとめるだけではなく、自分なりの「どうしてだろう?」という疑問を解決するのも大切な研究。資料館で、学芸員の方に質問してみてくださいね。
~高学年編~
高学年になると、学校でも歴史の勉強が始まり、古墳を授業で取り扱うこともあります。龍角寺古墳群や、県内のさまざまな遺跡から発掘された出土品をクローズアップするのもおもしろいですよ。
たとえば、龍角寺古墳群からは、冠の飾りや、金メッキや銀の装飾品、馬具などが発掘され、地位の高い人の墓だったことがうかがえます。いっぽう、古墳ではない遺跡からは、刀や、鉄でできた矢じり、器などが発掘されています。出土品から、当時の人々の暮らしや生活を想像してみるのもいいですね。
「房総のむら」では夏休み中、出土遺物にちなんだ下記のイベントを開催中。夏休みの自由研究の参考に!
またこのほか、事前予約なしで参加できる、千代紙ろうそく作り、風鈴の絵付け、藍のうつし染、畳のストラップづくりなどのさまざまな体験も開催されています! 詳しくはホームページをご確認ください。
<eco生活事始-考古学資料から見た上手な資源の使い方->
8月3日(土)~9月23日(月・祝)
原始・古代の人々は、限られた資源を無駄使いしないよう、工夫して生活の中に取り入れてきました。現代社会でも応用できる、賢いエコ生活のあり方を、出土した遺物から探ります。風土記の丘資料館で展示。
※展示解説会は8月11日(日)・9月1日(日)・22日(日) 10時・14時
【取材協力】
千葉県立房総のむら
千葉県印旛郡栄町龍角寺
(電車で)JR安食(あじき)駅よりバスで10分
(車で)東関東自動車道成田ICから約30分
休館日:月曜(祝・休日の場合は火曜日)
ホームページ:http://www2.chiba-muse.or.jp/www/MURA/
取材・文/植木淳子
※2019年8月時点の内容です。

