ほっと、人、あんしん。京葉ガス

ともに With you 千葉

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presented by SHUFUNOTOMO

やっぱり千葉が好き! 第21回 学校で飲酒をする背徳の悦び 〜鋸南麦酒/道の駅 保田小学校

2018年6月、地元、西船橋に「船橋ビール醸造所」というクラフトビールの醸造所が誕生。以来、ビール好きのぼくはすっかりここのビールにハマってリピーターとなっているのだが、今回、ぼくら「やぱ千葉チーム」が訪れたのは、まさに「船橋ビール醸造所」と同じ2018年6月に誕生した鋸南町のクラフトビール「鋸南麦酒」である。

 

工房と売店が併設されているのは、意外にも「道の駅きょなん」の一角だった。

「うちは、この9坪の工房で、Amazonやホームセンターで買えるようなふつうの機材を利用してビールを造っているんです」

案内してくれたのは工場長の岡村拓寛さん(35)。そもそもは国の事業として地域おこしの仕事をしていた人だが、5年前に一念発起し、千葉市から鋸南町に転居。その後、縁あってクラフトビール造りに邁進したそうだ。ビールの造り方や設備は、すでに島根県で成功していた「石見麦酒」に研修に行って学んだという。

 

現在の「鋸南麦酒」のラインナップは5種類。

・鋸南町産のコシヒカリと柚子を使用することで、苦味を抑え、後味をよくした「きょなんゴールデンエール」

・地元で作られたレモンを使用し、すっきりした風味と香りと苦味を表現した「アメリカンペールエール」。

・町内に群生する名物、スイセンの花(=ナルシス)をイメージした「ホワイトエールナルシス」は、地元の甘夏と山椒が使われ、苦味が少なめで後味がキリッとしている。

・「サンセットイングリッシュビター」は、鋸南町から東京湾越しに望む夕焼けをイメージした夕焼け色のビール。地元産の生姜を加えたしっかりとした味わいが特徴。

・町内の「藁珈琲洞」が自家焙煎したコーヒーを使った「トーキョーベイポーター」は、焙煎した麦で造られた黒ビール。チョコレートのようなコクとほのかな甘み、そして、コーヒーの香ばしさを味わえる。

 

 

 

「どれも鋸南らしいストーリーのあるビールにしてみました」

どこか誇らしげに言いながら、岡村さんが5種類のビンを見せてくれた。おしゃれでインパクトのあるそれぞれのラベルには、地元の象徴ともいえる鋸山と、伝説の巨人ダイダラボッチが描かれている。

「よかったら、この麦芽、ひと粒食べてみませんか?」

 

岡村さんに勧められたのは、焙煎して茶色くなった麦芽だった。言われるまま、ひと粒だけ口に放り込んで、カリッと噛んだ瞬間−−−、香ばしさが口のなかでポンと弾けて鼻に抜けた。

「たったひと粒でも、ものすごく香ばしいんですね。これを使って黒ビールを?」

ぼくが訊ねると、岡村さんは頷いた。

「そうです。ちょうどいま、この焙煎した麦芽で『トーキョーベイポーター』を造っているんですけど、少し味見をしてみますか?」

「それは、ぜひ」

というわけで、冷たい焦げ茶色の液体が入ったコップを岡村さんから手渡された。見たところ、ビールらしい泡がない。

 

どれどれ、とひとくち飲んでみると−−−。

「味はもう、完全に黒ビールだけど……」

「はい。まだ、炭酸が入っていないんです」

「でも、この時点で、すでに美味しいです」

ホットにしたら、このままでもイケてしまう気がしないでもない。それほどに風味が豊かだったのだ。

「それは嬉しいです。じつは、黒ビールが苦手な人でも、この『トーキョーベイポーター』なら飲めるっていう人がけっこういらっしゃるんですよ」

聞けば、この「トーキョーベイポーター」、なんと、すでに「ジャパン・グレートビア・アワーズ2019」で銅賞を獲得しているという。醸造所をオープンしてわずか一年足らずで受賞作を造ってしまうとは、岡村さん、さすがの腕前ではないか。これは、他の4種も期待できそうだ。

 

というわけで、ぼくらは5種類のビールすべてを購入。

今宵の宿で、それぞれの風味とストーリーをじっくり味わうのである。

 

最後に蛇足をひとつ。

ぼくがネットでサクッと調べたところ、「船橋ビール醸造所」と「鋸南麦酒」を含めると、現在、千葉県内にはクラフトビールの醸造所が10箇所以上もあるらしい。ビール好きの方は、県内のクラフトビール巡りを愉しんでみてはいかがでしょう?

 

◇   ◇   ◇

 

「鋸南麦酒」のある「道の駅きょなん」に続いて、もうひとつ鋸南町が誇る、ちょっとおもしろい道の駅を紹介しようと思う。

 

「道の駅 保田小学校」がそれである。

この風変わりな名前を目にすれば、ある程度は想像できると思うが−−−、ようするに、閉校となった小学校を改築してオープンした、ノスタルジック感たっぷりなテーマパーク的道の駅なのだ。

 

たとえば、かつての体育館は、鉄骨をそのまま残してリノベーションし、地元の農産物や土産物を販売する「里山市場 きょなん楽市」になっている(ここでは「道の駅 保田小学校」オリジナルの昔懐かしい「給食カレー」も売られている)。

 

 

さらに、学校内には中国料理店、ピザ専門店、食堂、カフェなどもあるのだが、それぞれの店舗で「学校給食」を再現したメニューが用意されているのが素晴らしい。

 

揚げパンにソフト麺、ミルメークにクジラの竜田揚げ……。

ああ、メニューを見ているだけで懐かしさがこみ上げてくるではないか。

午後3時には校歌が流れ、4時になるとチャイムが鳴った。

こういう演出もまたノスタルジック感をあおる。

 

ちなみに、今回、ぼくらが宿泊するのは、校舎の2階にずらりと並んだ「教室」である。

じつはここ、宿泊と入浴施設も備えていて、しかも、大人一泊4000円(素泊まり)と格安なのだ。

壁にランドセルがかけられた廊下。

黒板と机と椅子が置かれた教室(宿泊部屋)。

ただそこに居るだけで、懐かしさのあまりぼくの頬は緩んでしまうのだった。

 

さて、ぼくら「やぱ千葉」チームの面々は、この小学校の雰囲気に流されて無垢な童心にかえりながらも、欲望だけは「オトナ」を保ち続け、さきほど買った5種類のクラフトビールの栓を抜いたのである。

そして、「学校で飲酒」という背徳の愉悦を堪能するのであった。

5種類のビールは、はっきりとした個性があって、どれもいい。

おつまみは「元体育館」で買ったアレコレと、みんなの小学生時代の思い出話である。それぞれの失敗談に手を叩いて笑っているうちに、小学校の夜はあっという間に更けていく。

 

やがて、ぼくらはそれぞれ「畳ベッド」に敷かれた布団に潜り込んだ。

消灯し、目を閉じる。

少し開けておいた校舎の窓から、清々しい田舎の夜風とカエルの合唱が流れ込んできた。

ぼくのまぶたの裏側には、近所の池でオタマジャクシをすくっていた少年時代の映像が流れ出した。

 

蛇足ふたつ目。

ここ「道の駅 保田小学校」は、すでに噂が噂を呼んで、年間90万人が訪れるという人気ぶりだそうだ。宿泊も土日はほとんど予約で埋まるというので、もしも、泊まってみたいな−−−と思ったなら、なるべく早めの予約をおすすめします。

 

 

 

【鋸南麦酒】

〒299-1908

千葉県安房郡鋸南町吉浜517-1

道の駅きょなん「鋸南町観光物産センター」内

TEL:0470-29-5454

HP: https://www.facebook.com/kyonanbeer/

 

 

【都市交流施設・道の駅 保田小学校】

〒299−1902

千葉県安房郡鋸南町保田724

TEL:0470-29-5530

HP:https://hotasho.jp

 

 

【Cafe金次郎】

上記保田小学校内

TEL:0470-29-7211

 

 

※2019年7月時点の内容です

 

 

作者:森沢明夫

写真:鈴木正美

写真クリエイティブマネージメント:重枝龍明

編集:西小路梨可(主婦の友社)