ほっと、人、あんしん。京葉ガス

ともに With you 千葉

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presented by SHUFUNOTOMO

やっぱり千葉が好き! 第15回 潮風と珈琲に癒されるカフェ 〜サンドカフェ/GAKE

子供の頃から千葉県内の海は片っ端から遊び倒してきたけれど、「いちばん水質のいい海水浴場はどこ?」と訊かれたら、ぼくは迷わず「千倉海岸」と答える。

都市から離れているうえに外洋に面した千倉海岸は、いつも黒潮に洗われているから海水がフレッシュなのだろう。

波が穏やかなときに海に入ると、胸まで浸かっていても自分の足の指がよく見えるほどだ。

さらに、「千葉県内でいちばん好きな道は?」と訊かれたら、ぼくは「フラワーライン」と答える。信号がほとんどない海沿いの道路で、その名の通り、道路脇はまさに「花だらけ」なのだ。

 

美しい海と、花々に彩られた道路――。

 

その道沿いに、ぼくのお気に入りの喫茶店「サンドカフェ」はある。

この店は完全にマスターの込山敏郎さんの「趣味の店」と言っていい。風見鶏(というか風見鯨)を屋根にのせたブルーの外観はもちろん、店内の隅々にいたるまで、小説『老人と海』の世界観が見事に演出されているのだ。

マスターは、アメリカが生んだ文豪、アーネスト・ヘミングウェイの大ファンなのである。

 

久しぶりに店を訪れたぼくは、丁寧にドリップしてくれるコーヒーと、店の看板ともいえる「さざえカレー」を堪能した。

このカレーをひとことで言うと「深いコクを味わうカレー」となる。お腹がいっぱいなのに、そのコクを追いかけているうちに、うっかり完食してしまうという悪魔のカレーである(笑)

 

この日は、マスターがとても貴重なものを見せてくれた。

なんと、1952年9月1日発売号の『LIFE』誌である。

あの世界的な名作『老人と海』は、この誌面に全編が一挙に発表されたのだ。

古い、古い、アメリカの雑誌だから、ページのあちこちが擦り切れたような状態だけれど、それがむしろ「サンドカフェ」にはよく合っていると思う。この店は、コーヒーや食事と一緒に、ヘミングウェイの著した世界観を味わう場所なのだ。

それにしても、こんな貴重な雑誌まで入手しているだなんて、マスターのヘミングウェイへの執心ぶりがうかがえるではないか。

 

「サンドカフェ」のとなりには、小さな雑貨店「デッキシューズ」が併設されている。

こちらは海に関する様々な小物や衣類などが売られているのだが、海好きなぼくは、どの棚を眺めてもワクワクしてしまう。

「サンドカフェ」のオリジナルデザインのウェアなどもここで購入できる。

ちなみにぼくは「サンドカフェ」オリジナルのマグカップを愛用していて、日々、執筆のお供となっている。

 

もちろん、いまあなたが読んで下さっているこの原稿も、そのカップでコーヒーを飲みながら書いています。

千倉の潮風と『老人と海』の世界に想いを馳せながら。

 

 

◇   ◇   ◇

 

千葉県には「絶景」と称されるべき眺望を誇る喫茶店が二つある(とぼくは思っている)。

そのひとつは、内房側にある「音楽と珈琲の店 喫茶岬」だ。

無人の岬の先端にぽつんとたたずむその小さな店は、高台から東京湾を一望できるだけではなく、対岸に富士山を望めるのがいい。

ぼくは、この喫茶店の風情に感動して『虹の岬の喫茶店』という小説を書き、それが吉永小百合さんの目に留まって映画『ふしぎな岬の物語』が公開となった。

かつては「知るひとぞ知る」喫茶店だったのだが、いまや有名な「観光地」になってしまった。

 

もうひとつは、今回ぼくが初めて訪れたカフェ「GAKE」である。

こちらは外房側、つまり太平洋の水平線を高台から一望できる店だ。

以前からこの店の噂をあちこちで聞いていたので、ぼくとしては「ようやく来られた」という感慨すらあった。

そして、幾多の噂は、まさにそのままだったのだ。

「GAKE」の庭、紺碧の水平線を見晴るかす崖の際に立ったぼくは、思わず「おおおおお〜っ」と声を出してしまった。

 

広々!

 

とにかく、この漢字二文字である。

太平洋を渡ってきた海風が崖にぶつかり、下から吹き上げてくる。

その上昇気流にのったトンビが、ぼくの頭上をふわりふわりと旋回しながら「ピ〜ヒョロロロ」と歌う。

ぼくは庭に置かれたブランコやベンチに腰掛けて、存分に風景を堪能してから店内へと入っていった。

 

店内がまたおもしろい。

どこを見ても「骨董品」だらけなのだ。

古本、絵画、模型、雑貨、楽器、レコード、オブジェ、鳥かご、地球儀、家具……。

 

店主の瀬山周一さんが集めてきた品々は、そのほとんどが「商品」なので、気に入ったら購入することもできるそうだ。

 

ガトーショコラとコーヒーを味わったぼくは、店内をうろうろしながら宝探しのつもりで骨董品を手に取り、眺めていた。

ふと顔を上げれば、窓の向こうは開放的な太平洋のブルー。

 

なんて贅沢な時を過ごせるカフェだろう――。

 

よくよく考えてみれば、このカフェそのものが宝物ではないか。

そのことに気づいて、ぼくはため息をついた。

お世辞ではなく、本当に素直にそう思う。

 

春夏秋冬。

晴れた日、雨降りの日。

いろいろな太平洋の表情を眺めながら、ゆったりとコーヒーを味わいたい。

房総の西は「喫茶岬」、南は「サンドカフェ」、そして、東の「GAKE」。

ぼくのなかの「三大房総カフェ」は、これで決まりである。

 

 

 

【SAND CAFE】

〒295-0004

千葉県南房総市千倉町瀬戸2908-1

TEL: 0470-44-5255

URL: http://www.sandcafe.jp

 

【GAKE】

〒299-4503

千葉県いすみ市岬町和泉2404-21

TEL: 050-7551-2238

HP: https://linktr.ee/gakeinfo

※現在CAFEは冬季休業中で春先には再開予定ですので、
HPをご確認ください

 

喫茶岬の店舗情報は下記記事を御覧ください

やっぱり千葉が好き! 第5回 東京湾の「深海グルメ」探訪記〜かぢや旅館・喫茶岬

 

作者:森沢明夫

写真:鈴木正美

写真アシスタント:重枝龍明

編集:西小路梨可(主婦の友社)